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従来から受け継がれた方式から、近年のメカトロニクスまで、モジュール化を含んだ最新の機械設計の勘どころをご紹介します。

   

製品の開発・製造 | ものづくりには必ず順序がある。

量産製造

 

開発企画~量産製造までの流れ

今回は常日頃携わっている開発~量産製造までの流れについて各セクションでのポイントを紹介します。
ゼロから製品を造り上げるためには様々なステップを踏まないとなりません。各セクションでの考え方や外してはならないポイントについて記述します。

開発企画

製品企画

製品の成り立ちの源流ともいえる「製品企画」のセクションです。
ここでは、まず、「どんなもの」を「どんなフィールド(市場)」に「どのような規模」で「どのくらいの予算と期間」で「どのくらいの数量」を投じるのか?また、自社の技術だけで完成させることができるのか?そして最後に「どの程度利益」を得ることができるのかについてリサーチし、纏め、全体像を関係者全員が把握します。ここで、特に注意をしなくてはならない点は以下です。

①需要がある製品なのか?(または、需要をつくれるのか?)

②投じた費用に対して十分なリターンが生まれるか?

この二つが最も重要なポイントです。ここがしっかり予測できないとビジネスとして成り立ちません。

開発

製品企画が済んで、市場性あって利益が確保できるとなれば、次に実際の製品設計に入りますが、ここでは今までにない新技術の開発が必要な場合と従来技術の延長線上で賄えるものとに分けることができます。まったく新しい技術を導入して製品化するときには、その技術自体の基礎研究が必要となりますか、そこから始めなくてはなりません。ここでは主に従来技術の延長線上で行える製品つくりについて触れていきます。

・設計仕様書の策定

製品のコンセプトが決まったら、次にどのようなものを設計していくのかについて、その仕様をまとめた仕様書を策定します。この仕様書は製品全体の仕様を纏めます。

①製品の概要

②基本仕様

③環境仕様

④入出力仕様

⑤接続仕様

⑥制御仕様(ソフトウェア仕様など含む)

⑦エラー表示仕様

⑧外見寸法仕様

⑨特別仕様

以上の項目の内容について詳細を決めていきます。これは製品の機能を定める仕様ですので十分に検討し策定します。

・0次試作(原理試作)設計

策定した設計仕様書に基づき、ソフト、電子回路、機械(機構)などのそれぞれの分野において詳細の設計をします。大きさやデザインなどはあまり気にせず、基本性能を満足できるか否かの原理試作です。電子回路においてはユニバーサル基盤で手作りしたり、機構に都度加工や代替え材料で構成させたりします。とにかくここでは製品の仕様を満足する設計であるか否かの見極めをするための試作ですから環境仕様や耐久性などの造りこみはしません。ここで開発された技術的内容において特許を取得できる可能性も合わせて検討します。可能性があれば、特許出願などの準備もこの段階で始めます。

 ・1次試作設計(Engineering Sample)

0次試作で基本原理が確認できたら、次に大きさやデザインの要素を取り入れ製品全体として設計をしていきます。0次試作では、大きさやデザインはあまり気にせずに設計をしましたが、その機能性能を保ちつつ、決められたデザインや大きさの中に入れられるかがポイントです。決められたデザインや大きさの中に入れるために、電子基板などはPCB化します。機構部品の設計においても部品加工など量産加工に近い形で行うこともあります。環境仕様にも対応する設計とし、必要に応じて専用設備にて試験を行います。

①温度試験
低温試験・高試験・湿度試験・温度サイクル試験など

②ノイズイミュニティー
静電気放電試験・放射ノイズ試験・電波放射試験など

・2次試作設計(Commercial Sample)

1次試作で製品仕様を確認できたら、次に量産に向けての試作に入ります。ここでは、量産製造の為の準備(金型の起工や、PWBのガーバーデータや金型など)を整えます。また、環境試験はすべて行いクリアーしなくてはなりません。他にもこの段階で、QC工程図やMTBF、MTTRなどの項目についても検討及び準備を始めます。最終コストについてもこの段階で積算し計画のコストで生産可能か否かの見極めも行います。出来上がったサンプルは最終エンドユーザー等に渡し、必要に応じて評価試験を行ってもらいます。量産に向けての最も重要な最終試作となります。

量産

量産試作(Preproduction)

開発の段階が滞りなく終了しCSの製作も完了したら、いよいよ量産体制に入ります。
ここでは、まず、金型などで造られた部品を使って実際に数十台~数百台製造します。主に組立手順や品質の造りこみを行います。どんな製造ラインにするか?、どんな工程に分けるかなど生産技術的要素が大半を占めます。製造ラインに流してタクトタイムを設定したり、組立の為の治工具も準備します。組立作業員には手順書を作成して配布し、組立の習熟をしてもらいます。工程に不具合がないか生産能力に問題ないか、不良率はどの程度(何ppm)に抑えられるかなども検討する必要があります。また、品質管理の体制も確立していきます。

<QC工程図>

「QC工程図」は、製造現場の品質を保証するために、各工程で、管理特性や管理方法を工程の流れにって記載した表です。「製造条件」や「品質特性」を誰が何時、確認しているかを表したものです。

<信頼性評価>

Mean Time Between Failuresの略。
故障と故障の間の時間(稼働している時間)平均故障間隔といいます。

Mean Time To Repairの略。
故障から復旧までの時間、平均修理時間といいます。
復旧中の時間を合計して割り算すると平均修理時間を出すことができます。

量産(Mass Production)

製品企画~量産試作まですべての段階が完了したらいよいよ、本量産です。ここでは、企業のほとんどすべての部署が関わり合いを持つことになります。ここまで主役であった技術開発部隊はそのほとんどの仕事を製造部門(生産技術も含む)に移管することになりますから、ドキュメントを整理して引き継ぎをする必要があります。生産技術部門では生産の効率化を図るため治工具の整備をし、時には開発部門に生産性の視点から設計変更を要望したりすることにます。材料等を手配する資材部門においては自社内で製作できない部品等、外注協力企業にお願いしたり、一般市販部品においては納期の交渉や価格の交渉などを一手に引き受けることになります。品質管理部門では生産された製品が所定の品質に達しているか、また特注した部品に不具合などが出ていないかなどの調査や協力企業への立ち入り検査などを行うことになります。こうして様々な部署が関係を持ちながら製品の製造がなされていきます。それほどものつくりは多くの人が関わり合いを持たないと成り立たない仕事です。決して簡単にできるものではありません。

まとめ

以上のように製品の「企画・開発」~「製品量産」まで順をおって説明してきました。じつは、製品の開発・製造においてもっとも難しいことは、「品質を造りこむ」というところです。品質には、設計品質もあり部品品質もあります。特に市販部品を使うときや、協力企業にカスタム部品を製造してもらう時などはきちんとした管理体制が必要です。生産現場においても常に品質を意識し製造品質のつくり込みをしなくてはなりません。ものづくりはそういった技術の集大成で成り立っています。

 

 - 加工技術, 組立技術, 設計全般, 詳細設計