機械要素 ねじ・ボルトの基本を知ろう | 装置の信頼性はねじやボルトの使い方が基本
ねじやボルトの選定
ボルトやねじにはJIS(日本工業規格)によりその要目が規格化されています。必要に応じてこの規格に基づき、ボルトやねじのサイズを決め部品の締結を実現させることになります。実際の選定には他にも考慮しなければならないことがあります。それらを怠ると部品の脱落や破損につながり、安定した品質の製品や装置を造ることができないばかりか、大きな事故や災害につながりますので十分な検討が必要です。検討においては特に次の項目に注意をします。
①被締結部材の必要締結力を正確に把握する。
②締結に必要なねじやボルトの本数を適切に定める。
③締め付けトルクはボルトやねじの規格に合わせて適切に定める。
④ねじ山の掛りを十分にとる。
⑤用途に応じた系列のボルトやねじを選択する。
⑥ゆるみ止めは確実に施す。
強度区分
ボルトやねじの締め付けには上記の強度区分に合わせて締め付けトルクなどを設定します。
表中の「呼び引張強さ」とは、簡単に言うと「その値まではボルトが壊れません」ということを表して
います。また、下降伏点とはボルトやねじの材料に起因する応力ひずみ特性を表しています。
強度区分表では、下降伏点の値を示していますが、実際には応力ひずみ線図に示す降伏点以上の応力を
ボルトやねじに作用させてしまうと、材料の弾性限度を超えてしまい塑性変形を起こすので、ボルトや
ねじは元の長さに戻らなくなり、本来の機能を失ってしまいますので注意が必要です。
締め付けトルク
ボルトやねじを用いて部品の締結を行う際はボルトやねじの強度について考慮することは前項で説明し
ましたが、実際の締結力はどのように決まるかを解説します。被締結部品の締結力は、ボルトやねじに
与える締め付けトルクより換算します。締め付けトルクは下記の公式により算出することができます。
締め付けトルク(T) = F1 × L(N・m)
実際の締結力の管理にはこの締め付けトルクを管理し、締結力が十分であるか否かを判断することにな
りますから、重要な管理項目の一つに挙げる必要性があります。特に自動車部品の締結や航空機など部
品の締結においては、ボルトやねじにゆるみが発生すると大きな事故につながりますから、そう言った
場合には特殊なボルトを採用します。特殊なボルトについては次回取り上げたいと思います。
締め付トルクにもボルトねじのサイズにより適切な値が規格化されています。下表はその中の一部です
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締め付けトルクの設定には、上記の表を参考に許容値を超えない様に設定することが必要です。
軸力(締結力)
実際の部品がボルトやねじにて締結される強さは、ボルトやねじの締め付けトルクから発生する軸力
によります。軸力は下記の公式により算出することができます。
軸力(F)= T / kd
T : 締め付けトルク
k : トルク係数(通常は0.1~0.2)
d : ねじの呼び径
上記の公式に基づき、ボルトやねじのサイズを選定します。必要な締結力が1本のボルトやねじにより
確保できない場合は適時本数を増やし対応することになります。
まとめ
以上の様にボルトやねじを選定して行くわけですが、ボルトやねじには締め付けトルクや軸力から発生
する応力以外に、せん断力やねじり応力などが発生します。そのような応力も勘案しながら選定をする
必要です。ボルトやねじは基本的は部品同士を「締結」することが主な目的ですのでボルトやねじを用
いて位置決めを行うことは避けるべきです。次回は同じ締結機械要素でもある「ナット」について紹介
します。